しあわせの径~本とアートと音楽と

読書、アート、音楽、映画・ドラマ・スポーツなどについてさくっと語ります

京都散歩/京都鉄道博物館

梅小路機関車庫(京都鉄道博物館

二条駅舎(京都鉄道博物館

昨日の京都、午前中はどしゃ降りでした。

春休みになってパパの京都出張についてきた孫2人と京都散歩の一日でした。

仕事終わりのパパと合流するまで、私たちは、イオンモールKYOTO→京都鉄道博物館で楽しみました。

イオンモールKYOTOは、京都駅八条口から徒歩で行ける距離でしたが、どしゃ降りの雨の中の移動は少し大変でした。モール内はさまざまなショップが充実していて驚きました。

京都駅の伊勢丹ハイブランドのオンパレードですが、イオンの方はユニクロIKEAをはじめとするお馴染みのブランド店がたくさん入っているモールでした。カフェやファストフードや映画館もあります。

次の機会には、毎月21日の東寺の縁日弘法さんとイオン巡りをセットにして、日用品&骨董買い出し散歩として出かけてみようと思っています。

で、まだ雨の止まないなか京都鉄道博物館に行きました(京都駅から山陰線で一駅)。

もう春休みになったのと、雨天だということもあってか雨宿り客が多く詰めかけて、先日訪れた名古屋周辺の博物館や美術館とは次元の違った込み具合でした。

電車が好きな孫(5歳男児)が喜ぶと思ったのもとんだ思い違いで、彼はおもちゃの電車や実際の電車に乗ることが好きだったのでした。

私としては、日常的に利用していたことのある懐かしい旧二条駅舎(移築されて保存)や子どもの頃大好きだった本物のSLに出会えて、充実した時間でありました。

梅小路機関車庫・京都操車場周辺に作られたこの京都鉄道博物館は、その操車場も現存されていて、格納された多くのSLとともに現存されています。春休み期間中もあって、構内をSLが運行されていて懐かしい汽笛や煙の臭いにタイムスリップしてしまいました。

鉄道ヲタクでも何でもない私でも結構楽しめましたので、鉄道ファンの方はぜひ訪れてみてください。隠れた京都の名所だと思います。

その後、孫たちのパパと合流して、JR山陰線で嵯峨嵐山駅にまで足を延ばし、桜の開花にはまだ寒すぎた嵐山でわらび餅を食べて帰ってきました。

ということで、悪天候バージョンの京都散歩の一日でありました。それにしても、コロナが下火になったので、アジアや欧米豪からの観光客の数が半端ではなくて国際観光都市の京都に「穴場」は少なくなってきたことを実感しました(まだありますけど)。

(以下、鉄道博物館の写真です)

 

アッパレな尊富士の110年ぶりの快挙と若手力士の頭角で大相撲が楽しみです

春場所は荒れる」という言葉通り、2024年の大阪春場所は、実に110年ぶりという新入幕力士による幕ノ内優勝で幕を閉じました。

60年以上大相撲に親しんできて、新入幕力士が優勝した前例があったのかと驚きましたが、その前例を無視して、大相撲という今の機構が誕生して初めてと言っていい尊富士(たけるふじ・24歳)による快挙快挙でした。

14日目の朝乃山(30)の取組後、歩けなくなって車いすで花道を引き揚げた尊富士でしたから、優勝はおろか千秋楽の出場さえ無理だと思っていましたので、この優勝は二重の快挙だったと思います。アッパレ!

幕の内の一番下、前頭十七枚目での優勝って前例がないことないでしょうから、来場所の番付がどこまで上がるのかがとても興味深いところです。小結とか前頭筆頭くらいでもいいのじゃないかと思います。盛り上げないと。

実のところ、このところ私のひいきの関取衆(貴景勝、朝乃山、宇良、王鵬など)が元気がないので大相撲中継はあまり見なかったのですが、急きょ14日目から注目し始めました。

気が付けば若手の有望力士が実力を付け出し始めて、面白そうだと思い始めました。

とりわけここ2場所で頭角を現してきた尊富士や大の里が魅力的な若い力士だと思っています。

そのラインナップが以下の通りです。

尊富士(24)伊勢ヶ濱部屋 青森県五所川原市出身 鳥取城北高等学校 日本大学
大の里(23)二所ノ関部屋 石川県出身 新潟県立海洋高等学校 日本体育大学
王鵬(24)   大嶽部屋 東京都出身 埼玉栄高校
熱海富士(21)伊勢ヶ濱部屋 静岡県熱海市出身 飛龍高等学校
伯桜鵬(20)宮城野部屋     鳥取県倉吉市出身 鳥取城北高等学校
琴ノ若(26)佐渡ヶ嶽部屋 千葉県松戸市 埼玉栄高校

落合ことは肩の手術から復帰していますし、皆故障を持ちながら努力を続けているようです。尊富士の足の故障が気がかりですが、しっかり治して土俵に上がってほしいものです。

以前から主張していますが、これだけカガ人が多ければ、かつては存在した「公傷制度」により番付が大きく下がらない仕組みを設けるとか、土俵の高さや土俵下のクッションの設置とかの工夫をしてもらいたいと思っています。

相撲協会の最も大切な資産は力士ですので、彼らの健康問題が解決しなければ大相撲はすたれてしまうと思うのですがいかがでしょう。ケガが増えると、勝ち星を金で買うなどといった八百長問題もまたぶり返す危険性をはらんでいます。

夢を持った海外からの出稼ぎ力士も、大相撲を魅力に思って来日しなくなりますから、力士の確保や育成に苦労することになります。

ということで、とりあえずは上の一覧に挙げた20歳から26歳くらいまでの若手の有望株(以下に画像を貼りました)の活躍を、来場所からウォッチしたいなと思っています。みなケガなくガンバレ!

 

大の里(23) 身長193cm、体重175kg

王鵬(24) 身長191.0cm、体重176.0kg

熱海富士(21) 身長186.0cm、体重181.0kg

伯桜鵬(20) 身長181.0cm、体重153.0kg

琴ノ若(26) 身長189.0cm、体重172.0kg

綿矢りさの「パッキパキ北京」で精神勝利法を学びました

パッキパキ北京   綿矢りさ  集英社

コロナ禍の北京で単身赴任中の夫から、一緒に暮らそうと乞われた菖蒲(アヤメ)。愛犬ペイペイを携えしぶしぶ中国に渡るが、「人生エンジョイ勢」を極める菖蒲、タダじゃ絶対に転ばない。過酷な隔離期間も難なくクリアし、現地の高級料理から超絶ローカルフードまで食べまくり、極寒のなか新春お祭り騒ぎ「春節」を堪能する。街のカオスすぎる交通事情の把握や、北京っ子たちの生態調査も欠かさない。これぞ、貪欲駐妻ライフ!
北京を誰よりもフラットに「視察」する菖蒲がたどり着く境地とは……?

綿矢りさ初読みでした。小説「パッキパキ北京」で、あらすじは上の通り。

「パッキパキ」というオノマトペは、厳寒の北京の河が凍っているさまをあらわす表現以外に出てこなかったのですが、何か他のことを表しているのかもしれません。とにかく、春節前の北京は寒そうなのに、本場のコロナや地元っ子に負けず劣らず主人公のアヤメ姉さんはたくましく北京を楽しみます。

なんかむなしい。ってのをわたしは経験したことが無くて、それは私が苦労してないとかじゃなく、楽しみを見つけるのが上手いからだ。」という一文から始まる本作。

私にとってはこの一発目の掴みが僥倖というべき出会いであり、本作全体との幸せな出会いでもありました。

著者の分身の一部であろう主人公ほど私はパキパキ(キレッキレ)してはいないが、主人公の夫のように適応力や順応性が乏しくもないと思っているので、難しい回路を絶って楽しみに浸ることができます。それは必ずしも出来の良い人間の特徴ではないのですが、楽しく生きるすべを持っていることだと思っています。

本書後半で、アヤメはパッキパキな独白を繰り広げますが、それは日本に残してきた不特定多数の悩める若者たちに向けて囁いているようにも感じられました。

魯迅の「阿Q正伝」の主人公阿Qが繰り広げたバカげた「精神勝利法」は、いまとなっては図太く生き抜くいい方法なんじゃないかとアヤメはつぶやきます。

つまりボコボコにされたにもかかわらず「きょうはこれくらいにしといたるわ」とうそぶく池乃めだかを心の中に飼っておくのもいい方法じゃないかというのです。

阿Q正伝」を読んでいない私は、この小説を読了後Youtubeで「阿Q正伝」と精神勝利法の解説動画で付け焼刃の理論武装しました。

そしてアヤメは、この世の鬼や変態やバカが持つ偏見は絶対なくならないから、「回線切って風呂入って生きろ」と教えてくれます。

小賢しくて息苦しくなるより、馬鹿の振りして楽しく生きるのが幸せに一番近道だと、アヤメ姉さんは哲学者のように語りかけてくれるのでありました。◎

今週の書評本 全89冊(2024/3/18~3/24掲載分 週刊9誌&新聞3紙)

毎週日曜日は、この一週間(3/18~3/24)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。

今週の書評本

*表示凡例
掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数
書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上を表示)

サンデー毎日「遠回りの読書」: 3/31 号 2 冊
路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅 宮田珠己 亜紀書房 2,200
雑草学のセンセイは「みちくさ研究家」 稲垣栄洋 中央公論新社 1,650

女性自身「今週の本」: 4/2 号 4 冊
そして誰かがいなくなる 下村敦史 中央公論新社 1,980
新装版 ムーミン谷の彗星 トーベ・ヤンソン 講談社文庫 660
61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました 香山リカ 集英社 1,760
きらん風月 永井紗耶子 講談社 1,980

女性セブン「セブンズライブラリー」: 4/4 号 4 冊
経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて 山崎元 Gakken 1,760
方舟を燃やす 角田光代 新潮社 1,980
見果てぬ花 浅田次郎 小学館文庫 715
世界は経営でできている 岩尾俊兵 講談社現代新書 990

週刊現代「日本一の書評」: 3/30 号 6 冊
兎は薄氷に駆ける 貴志祐介 毎日新聞出版 2,420
アルプス席の母 早見和真 小学館 1,870
生きる演技 町屋良平 河出書房新社 2,475
なぜマンションは高騰しているのか 牧野知弘 祥伝社新書 990
涙にも国籍はあるのでしょうか 津波で亡くなった外国人をたどって 三浦英之 新潮社 1,925
火輪の翼 千葉ともこ 文藝春秋 2,200

週刊ポスト「ポスト・ブック・レビュー」: 3/26 号 10 冊
アルプス席の母 早見和真 小学館 1,870
みどりいせき 大田ステファニー歓人 集英社 1,870
三木武吉の裏表 輿論指導か世論喚起か 赤上裕幸 創元社 2,970
方舟を燃やす田光代 新潮社 1,980
藤沢周連作短編集 藤沢周 春陽堂書店 1,980
時代の反逆者たち 青木理 河出書房新社 1,980
死にたがりの君に贈る物語 綾崎隼 ポプラ文庫 836
TIMELESS 朝吹真理子 新潮文庫 825
働かないアリ 過労死するアリ~ヒト社会が幸せになるヒント~ 村上貴弘 扶桑社新書 1,155
なぜマンションは高騰しているのか 牧野知弘 祥伝社新書 990

週刊新潮「Bookwormの読書万巻」: 3/28 号 15 冊
グローバリスト 帝国の終焉とネオリベラリズムの誕生 クィン・スロボディアン 白水社 5,280
チワワ・シンドローム 大前 粟生 文藝春秋 1,650
両京十五日 1 凶兆 馬伯庸 早川書房 2,420
非凡の人 三田平凡寺 チャプコヴァー・ヘレナ かもがわ出版 3,960
ファンシー絵みやげ天国 山下メロ ケンエレブックス 2,420
東京の台所 大平一枝 毎日文庫 1,100
「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室 キャスリーン・フリン 新潮文庫 880
わたしの献立日記 沢村貞子 中公文庫 755
押してはいけない 妻のスイッチ 石原壮一郎 青春新書プレイブックス 1,265
ベッド タイム アイズ 山田詠美 新潮文庫 693
ヴィヨン全詩集 フランソワ・ヴィヨン 岩波文庫 1,400
アメリカ映画の文化副読本 渡辺将人 日本経済新聞出版 1,980
ビジュアル恋猫パラダイス 浮世絵から映画、切手まで猫三昧 町田てつ 天夢人 2,200
ウェルビーイング・シンキング 高橋ゆき 日経BP 1,980
第二次マンガ革命史 劇画と青年コミックの誕生 中川右介 双葉社 2,420

週刊文春「文春図書館」: 3/28 号 12 冊
冬に子供が生まれる 佐藤正午 小学館 1,980
失われたアトランティス ギャヴィン・メンジーズ 扶桑社 2,750
林陵平のサッカー観戦術 試合がぐっと面白くなる極意 林陵平 平凡社新書 1,100
屍衣にポケットはない ホレス・マッコイ 新潮文庫 825
ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人 アレックス・マイクリーディーズ ハヤカワミステリ文庫 1,870
かっても まけても いいんだよ (ガストンのソーシャルスキルえほん) オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ 主婦の友社 1,320
陰謀論はなぜ生まれるのか Qアノンとソーシャルメディア マイク・ロスチャイルド 慶應義塾大学出版会 2,970
私は元気がありません 長井短 朝日新聞出版 1,760
未来経過観測員 田中空 KADOKAWA 1,925
なぜ東大は男だらけなのか 矢口祐人 集英社新書 1,089
61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました 香山リカ 集英社 1,760
おくれ毛で風を切れ 古賀及子 素粒社 1,980

週刊エコノミスト (今週号はお休み)

週刊東洋経済「話題の本」: 3/16 号 6 冊
日本国債入門 服部孝洋 金融財政事情研究会 3,630
私たちはいつから「孤独」になったのか フェイ・バウンド・アルバーティ みすず書房 4,620
解(ほど)けていく国家 現代フランスにおける自由化の歴史 ミシェル・ルゲラーズ, ダニエル・タルタコウスキ 吉田書店 3,520
西行 歌と旅と人生 寺澤行忠 新潮選書 1,760
新・宇宙戦争 ミサイル迎撃から人工衛星攻撃まで 長島純 PHP新書 1,100
科学文明の起源 近代世界を生んだグローバルな科学の歴史 ジェイムズ・ポスケット 東洋経済新報社 3,520

朝日新聞: 3/23 朝刊 14 冊
13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海 田中孝幸 東洋経済新報社 1,650
新訳 平和の経済的帰結 ジョン・メイナード・ケインズ 東洋経済新報社 2,640
ヨーロッパ史 拡大と統合の力学 大月康弘 岩波新書 1,100
エドワード・サイード ある批評家の残響 中井亜佐子 書肆侃侃房 1,870
三井大坂両替店 銀行業の先駆け、その技術と挑戦 萬代悠 中公新書 1,100
ジェンダー史10講 姫岡とし子 岩波新書 1,056
タスマニア パオロ・ジョルダーノ 早川書房 3,410
乱歩殺人事件 「悪霊」ふたたび 芦辺拓江戸川乱歩 KADOKAWA 2,090
漂流する日本企業 どこで、なにを、間違え、迷走したのか? 伊丹敬之 東洋経済新報社 2,640
1976年の新宿ロフト 平野悠 星海社新書 1,540
君はそれを認めたくないんだろう 山下賢二 トゥーヴァージンズ 1,980
歴史に消えたパトロン 謎の大富豪、赤星鉄馬 与那原恵 中公文庫 1,430
食べる西洋美術史「最後の晩餐」から読む 宮下規久朗 光文社未来ライブラリー 1,320
ナチズムの記憶 日常生活からみた第三帝国 山本秀行 ちくま学芸文庫 1,650

毎日新聞: 3/23 朝刊 8 冊
鶴見和子水俣 共生の思想としての内発的発展杉本星子、西川祐子 藤原書店 4,840
名場面の英語で味わう イギリス小説の傑作 英文読解力をみがく10講 斎藤兆史、髙橋和子 NHK出版 2,090
はやぶさ2」は何を持ち帰ったのか リュウグウの石の声を聴く 橘省吾 岩波書店 1,650
ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に騙されるのか ジョージナ・スタージ 集英社 2,640
中学生日記》のメディア史 自主性を演じるドラマ 王令薇 創元社 3,850
人間とは何か マーク・トウェイン 岩波文庫 715
頰に哀しみを刻め S・A・コスビー ハーパーコリンズ・ジャパン 1,320
K+ICO 上田岳弘 文藝春秋 1,760 ④

読売新聞: 3/24 朝刊 8 冊
夜明けのはざま 町田そのこ ポプラ社 1,870
中村哲さん殺害事件 実行犯の「遺言」 乗京真知 朝日新聞出版 1,760
1947 長浦京 光文社 2,750
化学の授業をはじめます。 ボニー・ガルマス 文藝春秋 2,750
ドゥルーズ=ガタリと私たち 言語表現と生成変化の哲学 平田公威 水声社 4,950
大楽必易 わたくしの伊福部昭片山杜秀 新潮社 2,970
なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか ジョナサン・マレシック 青土社 2,420
嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する 山本圭 光文社新書 946 

以上

韓国ドラマ「私の解放日誌」を見て解放されました

Netflixで配信中の韓国ドラマ「私の解放日誌」を見ました。とてもいいドラマでした。

2022年に作られた見るべき韓国ドラマは、「第59回 百想芸術大賞」の授賞式Youtubeで仕込んでいました。
ちなみに「第59回 百想芸術大賞」の作品賞ノミネートが以下の5作でした。
『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』
『シスターズ』
『私たちのブルース』
『私の解放日誌』

上3本はすでに記事にしたとおり、とても楽しめた名作でしたが、『私たちのブルース』は途中で見るのをやめ、『私の解放日誌』は見るのをずっとためらっていた作品でした。

私の好きなのは、ハードボイルド、法廷もの、ヒューマン系、サスペンスもので、敬遠しがちなのが恋愛ものやファンタジー系で、『私の解放日誌』は一見恋愛タッチでしたので躊躇していました。

全16話もある『私の解放日誌』で、第一話を見終わった時点で、あまりにもメリハリがない謎めいた展開に、これは途中で挫折しそうな予感もありましたが、「謎めいた」男の存在を放っておけなくて最終話まで付き合ってしまいました。

その謎めいた男の役をソン・ソックという俳優が演じています。
ソン・ソックとは「サバイバー 60日間の大統領」ではじめて出会いました。若手の大統領補佐官役が、びしっと決まっていて、どちらかというとのっぺりとした能面顔なのにもかかわらず顔で魅力的な演技が可能な俳優でした。

その後、「D.P. -脱走兵追跡官-」ののんびりした上官役や「殺人者のパラドックス」の能力のある刑事役などで彼の魅力に惹かれていました。
本作でも、主人公の5人家族が住むいなか町に転がり込んできたフルネームさえ明かさない謎の男を魅力的に演じています。

鑑賞の途中で、丹念に練られて手入れされた良い脚本だと私は妻と感想を交わしていて、全話見終わってから確認したら、本作は女性の脚本家が手掛けたもので、百想芸術大賞の脚本賞を獲得していました。

強敵ばかりの中で受賞したことが頷ける良い脚本でした。

俳優たちも魅力的で、年齢順に女・男・女で構成された20代から40代までの3人の兄弟が、閉鎖的な田舎からソウルに通勤しながら仕事や恋愛やを通して直面する人生の機微を見事に演じています。

3人兄弟だけじゃなくて、出演俳優たちのセリフが重くて深くて、見ている人たちも「解放」される言葉があふれていました。カメラワークも良くて感心しました。

華やかさやきらびやかさとは無縁ですが、落ち着いたタッチのヒューマンドラマとして「人生いろいろ」「生きてるだけで丸儲け」と、ほっこり・あたたかなドラマでありました。

 

www.youtube.com



一宮散歩/三岸節子記念美術館

いつか訪れたいと思っていた一宮の「三岸節子記念美術館」に行ってきました。当美術館は節子の生家を尾西市(当時)が買い戻して1998年にオープンしました。

三岸節子は1905年に後の尾西市、現一宮市に生まれ1999年に亡くなりました。生涯現役の画家でありました。

もうかなり前ですが、私が最初に惹かれた作品は三岸が女子美時代に描いた「自画像」でした。今回はレプリカが展示されていましたが、私はこの作品の現物を神戸のは御影の香雪美術館で開催された「三岸節子展」(2016年5月)でお目にかかりました。

現在「自画像」は長野県立美術館:2024年3月16日(土)~5月12日(日)に貸し出し中で、その後、碧南市藤井達吉現代美術館:2024年5月25日(土)~7月7日(日)に巡回されるそうです。

三岸節子の作品と出会うたびに、その大胆な色使いと筆使いに憧れ続けています。とりわけ、彼女の風景画と静物画が私を激しく魅了します。

世の日曜画家の最後尾にいる私ですが、節子には近寄れないないので、真似してみようかと思っています。

今回は「花より花らしく」というコレクション展(入場料320円)が開催されていました。「花」以外にも、風景画や静物画の展示もあり、展示数は少ないもののたっぷり楽しめました。

名古屋城に行ってその近辺でお土産をあさりたいと言っていた妻も、三岸節子とその作品にすっかり魅了されたようで、一宮に足を運んだ甲斐がありました。

自画像 1925年(20歳) 油彩 3号 35.0×22.0

花   1989年(84歳) 油彩 20号 81.0×100.0

花・果実 1932年(27歳) 油彩 30号 90.0×72.0

アンダルシアの町 1987年(82歳) 油彩 30号 73.0×92.0 

細い運河 1974年(69歳) 油彩 30号 90.0×73.0

赤い地図 1980年(75歳) 油彩 40号 100.5×81.5

ヴェネチアの橋 1971年(66歳)油彩 30号 92.0×73.0

ブルゴーニュにて  1989年(84歳) 油彩 40号 81.0×100.0

白い花(ヴェロンにて)1989年(84歳)油彩 30号 73.0×92.0

豊田散歩/豊田市美術館・作品編

オイゲニア・プリマフェージの肖像 グスタフ・クリムト 1913/14年 油彩 140.0×85.0

豊田市美術館の収蔵作品は立派なものが多くて驚きました。

15年ほど前、仕事の一環で日本の自治体の財政状態を調べたことがあったのですが、愛知県の各都市(名古屋以外の自治体)は財政健全度が軒並み上位にありました。おそらくトヨタ自動車とその関連企業による法人税やそれらの企業で働く住民の所得税で潤っているのだと思います。

そのような健全財政下で、美術品のコレクションも充実しているのかもしれません。トヨタ自動車のお膝元の美術館、豊田市美術館の「パトロン」というべき企業や住民は、はかなり強靭な収益構造に支えられているように思います。

私が先週訪れたときには「2023年度 第3期 コレクション展 2024.01.20-2024.05.06」が開催中でしたので、特別展にはわき目も降らずにコレクション展のチケット(300円)を購入した次第です。

駐車場は無料で常設展は300円で、2時間はたっぷり楽しめます。ぜひお出かけください。

ということで、クリムト藤田嗣治岸田劉生エゴン・シーレ梅原龍三郎川合玉堂小林古径速水御舟横山大観サルバドール・ダリ濱田庄司奈良美智などの作品を堪能しました。

www.museum.toyota.aichi.jp

自画像 藤田 嗣治 1943年 油彩 23.0×15.0

自画像 岸田 劉生 1913年 油彩 45.6×38.0

オポルト・ツィハチェックの肖像 エゴン・シーレ 1907年 油彩 149.8×49.7

カール・グリュンヴァルトの肖像 エゴン・シーレ 1917年 油彩 140.9×110.5

少女アニーン 梅原 龍三郎 1908年 油彩ス 41.0×32.8

花飾りをつけた女 国吉 康雄 1932年 油彩 66.0×81.3

 

定まらないフォルムの絵画 ダニエル・ビュレン 1966年 アクリル 200.0×200.0