しあわせの径~本とアートと音楽と

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松田青子のエッセイ「自分で名付ける」を読みました◎

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自分で名付ける  松田 青子   集英社

1年ほど前、2020年の「TIMESが選ぶ今年の必読書100冊」のなかに、日本の女性作家4人の作品が選ばれていて、その中のひとり松田青子(まつだ あおこ)という作家を初めて知る。

そして、先だっては「おばちゃんたちのいるところ」の英訳版が、「世界幻想文学大賞」の短編集部門で受賞したという快挙の報せ。
https://digital.asahi.com/articles/ASPC86DWZPC8UCLV011.html

本書「自分で名付ける」は、著者が妊娠時から出産して子育てに至るまでの自らの経験に基づいたエッセイ。妊娠、出産、子育てにまつわる日本の社会や家庭や生活のシステム全般について綴られている。軽く毒づいている。

読み始めてしばらくして、68歳男が読むにはどうなんだ?と思いながらページをめくっていたのだが、そのうちに初読み作家の魅力ある文章に付き合っていた。

本書全体を覆う関西人特有の毒を持つユーモアも、私にはとても心地よく響いた。

実母が付きっきりで子育てを全面サポートしてくれるし(この著者のお母さんがスーパーすぎて羨ましすぎる)、10歳年下のパートナーもまずまずの協力者。そして、文筆業である本人は職業人だけど通勤が不要な在宅仕事人だから、3人体制での子育ての環境はかなり恵まれているなとは思うのだが、エッセイに仕立ててみると細かいところに棲息する「あるある」な不条理を見つけ出せるのだった。

下に貼り付けた本書の目次でわかるように、妊娠からはじまってベイビーが2歳を過ぎるまでのトータル3年間の育児の気付きが、本書に詰まっている。

とかくこの国での子育ては面倒臭いことが多いのだけど、グッズの紹介など子育て中のお役立ち情報も含ませていて親切だ。

育児エッセイとして、いまを生きるためのエッセイとして、老若男女に関係なくはないことばかりが詰まっているので、ぜひ楽しんでいただきたい読み物だった。

松田青子、次は小説を読むことにする。


「自分で名付ける」 目次
1章 「妊婦」になる
2章 「無痛分娩でお願いします」
3章 「つわり」というわけのわからないもの
4章 「理想の母親像」とゾンビたち
5章 「妊娠線」は妊娠中にいれたタトゥー
6章 「母乳」、「液体ミルク」、「マザーズバッグ」
7章 「ワンオペ」がこわい
8章 「うるさくないね、かわいいね」
9章 「ベビーカーどうですかねえ」
10章 「名前」を付ける
11章 「電車」と「料理」、どっちも好き
12章 「保護する者でございます」