
ツミデミック 一穂ミチ 光文社
直木賞受賞作「ツミデミック」を読みました。
「スモールワールズ」「パラソルでパラシュート」「光のとこにいてね」と読んできて、4作目になる一穂ミチ作品でした。
本作「ツミデミック」は、犯罪とパンデミックを合成した造語のタイトルがつけられていて、6編の短編が収められています。
犯罪小説の寄せ集めで、ベースはそれぞれ独自のミステリアスな要素で読ませる小説群となっています。
一穂ミチは、BL小説の分野では著名な作家のようですが、その分野に足を突っ込んでアンテナを巡らせていれば、世の中の興味深い情報に敏感になっているんでしょうか、この作家はいつもよくこんな現代物語を思いつくなあと感心させられます。
この時期に上梓される小説は、ご多分に漏れずコロナのまん延する日本が舞台になっていますが、登場人物である老若男女たちの「人生いろいろ」模様が、飽きさせない展開になっています。
6篇にはそれぞれ、違ったタイプの犯罪がはめ込まれています。
ドイツの弁護士作家フェルディナント・フォン・シーラッハの短篇小説「犯罪」や「刑罰」は、実際の犯罪を作家が非常に面白くて静謐な小説に仕上げていますが、一穂ミチは私たちの周辺で起こりうるにもかかわらず興味深い犯罪を、時にはユーモア交じりに創作し仕立てあげています。
本書には、オレオレ詐欺みたいな小説にしても面白くもなんともない事件は存在していなくて、よくこんなエピソードを仕立てるなあと、あってはならない犯罪なのに楽しんだり感心したり(2回目)してしまいました。
個人的には、この作家には、BL小説から体重移動して一般世界の小説をもっとたくさん書いてほしいなと思っています。