しあわせの径~本とアートと音楽と

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外圧を受けない女子高生が主人公の「地雷グリコ」を読みました。

地雷グリコ  青崎 有吾  KADOKAWA

第24回本格ミステリ大賞を2024年5月10日に受賞したのを皮切りに、3日後の5月13日に第77回日本推理作家協会賞を受賞し、その3日後の5月16日には第37回山本周五郎賞を受賞するという快挙、1週間の間に大きな賞を3つ受賞した青崎有吾の「地雷グリコ」を読みました。

著者の青崎有吾は、ミステリ作家として認められることは彼のキャリアからして自負していたようですが、山本周五郎賞へのノミネートと受賞は望外の栄誉だったようで、受賞発表の際の記者会見では「ぼくでいいんでしょうか」と言わんばかりの戸惑いにも似た喜びを見せていたように感じました。

例によって作品についての事前情報を全く寄せ付けずに本書を読み始めましたが、ゲーム好きミステリ好きクイズ好きの私は、冒頭で一気に作品世界に引きずり込まれてしまいました。

本書は5編の短編小説からなるものですが、主人公はアンニュイな女子高生射守矢真兎(いもりや まと)で、彼女が5編・5種類のゲームに挑戦します。

真兎がゲームに参戦するきっかけはたわいもないことで、そのゲームは誰もが知る単純な一般的なもので、たとえば表題の「地雷グリコ」ゲームは、ベースとなっているのが階段で遊ぶあのジャンケンゲーム「グ・リ・コ」です。

ただ、どのゲームも特殊な制約条件が付加されていて、その特殊ルールがゲームを面白くすると同時に読むものを楽しくさせます。

真兎にとっては行き当たりばったりで出会ったゲームにはじめて知る特殊ルールが付加されて参戦することになりますが、毎編登場する強者相手に彼女は瞬時に攻略法を思いつきます。

名前以外はごくごく平凡な感じの高1女子が、実はとんでもない能力を持っているところが痛快で、これぞファンタスティックでミステリアスな面白小説であり漫画チックなのです。

読み始めてしばらくして「面白い!」と思ったところで、この著者青崎はアニメや漫画の原作を書いてないか?と調べたら、案の定そういった仕事をしている作家でした。そこで、なるほどなるほどなぁと思ったしだいでありました。

ネタバレにならないよう小説の内容にもう少し触れますと、挿入イラストを参考に時間をかけてじっくり読み込まないとゲーム自体に深く入り込めないところもあるにはありますが、それよりもゲームの実況描写や成り行きや真兎とその周辺の高校生の生態などが巧くミックスされていて感覚的にも愉しめますす。視覚的なゲームの謎解きも含めてアニメなどで面白さを再確認したいと思いました。

真兎といつも一緒にいる中学時代からの親友鉱田ちゃんがとてもいい仕事をしてくれて、ワトソンのように真兎のゲームの成り行きと結果を忠実に綴っていて、私たちをシャーロック・ホームズに夢中になった頃に連れ戻してくれます。

2024年には小説世界で3人の女子高生との出会いがありました。ベストセラー小説「成瀬は…」シリーズで国民的アイドルとなった成瀬あかりと、「みどりいせき」三島由紀夫賞)のという名の元少年野球のエースの不良少女、そして本作「地雷グリコ」射守矢真兎

この外圧に影響されない素晴らしい女子高生3人に出会えた2024年でありました。