
本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚 かまど (著), みくのしん (著) 大和書房
昨年、新聞・雑誌の書評に取り上げられていた本書のタイトル「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚」を目にして、必ず読むカテゴリーの「積ん読本」にしていました。
同じ会社で働くウェブライターのかまどとみくのしん(以下、みく)。
みくはライターなのに一冊も本を読んだことがないという、信じられない32歳なのですが、彼が名作短篇太宰治の「走れメロス」有島武郎の「一房の葡萄」芥川龍之介の「杜子春」を読んだらどういう展開になるのか、傍らで観察・待機する同僚のかまどがその一部始終を本書に仕立てました。
これ、本書になる前にウェブで電子書籍になっていて、それがかなりの反響を呼んだようです。
みくは、1.2行読んでは(それも音読)、文章に反応したり言葉の意味を質問したり感動や感想をかまどに伝えたりする、抱腹絶倒の「実録ゆっくり二人読書会」がはじまり、読み手もそのすこぶる楽しい読書会に参加することになります。
これが、3人の文豪たちに導かれた充実した読書会で、初心者運転者マークのみくの感性や気づきが素朴で新しくて、本とこんな形で対峙することがあるのだろうかと感心・感動してしまいます。
私は「走れメロス」は教科書で出会ったけど全編読んだかな?、「一房の葡萄」は小学校の先生の朗読で接しただけのはず、「杜子春」は一学年上の6年生の学芸会の劇で観ただけのはず、というキャリアでした。なので、いつも楽しんでいるYouTubeの多くの朗読チャンネルで事前に全編聴き終えてから本書を読み始めたのですが、本書は親切にもそんなことをせずとも100%楽しめる建付けになっていました。
太宰と有島と芥川の小説の全体の構成の妙、洗練された文体やそのリズム感の良さ、巧みな言葉のチョイスなどに、みくを通して感動できるのでした。「さすがは文豪」と、追認できたのでした。
かまどは良い企画を思いつき、良き同僚と実に良い仕事を完成させました。
この長いタイトルにしないと手に取ってもらえないように思うのですが、それでも「本を読んだことがない人」はこれを読まないような気もしますので、身近な誰かにプレゼントしたいと思わせる一冊でした。
書評掲載例(すべて2024年)
毎日新聞 9/7 付
日本経済新聞 9/14 付
ダ・ヴィンチ 11月号
週刊東洋経済 11/2・11/9 号


