しあわせの径~本とアートと音楽と

読書、アート、音楽、映画・ドラマ・スポーツなどについてさくっと語ります

新川帆立の「女の国会」 山本周五郎賞受賞も納得の逸品でした

女の国会  新川帆立  幻冬舎

妻は「元彼の遺言状」も読んだようですが、私は新川帆立初読みです。

女の国会」は文字通り国会を舞台にした物語ですが、実在の議員に似た登場人物が出てくるような出てこないような...。

著者の頭の中と皮膚感覚で造形した女性5人、国会議員が2人と議員秘書と新聞記者と元アナウンサーの市会議員がヴィヴィッドに描かれていて、彼女たちが狡いほど能力が高くて魅力的なのです。

男は女の出来損ないだとどの分野でも感じられる昨今ですが、こと永田町界隈ではそれが顕著。年寄りと男がダメ過ぎて、ダメの多様性がすべて存在している感があります。

著者は2か月ほど永田町に住んで取材をしていたようですから、舞台となる国会議事堂に登場人物を放って、半ば創作でありつつリアルなダメ永田町の核心部分も読み手にしっかりはっきり伝えました。それを、素晴らしく感じました。

先に述べた5人の女性と、彼女たちを取り巻く男性議員など10人くらいが、永田町と地元選挙区でうごめくだけで、的確にいまの社会と女性を取り巻く現状が手に取るようにわかります。

政治に関心がなくとも、こういう小説でリアルな現実を抵抗感なく受け入れられるところが、小説の魅力・威力・知力だと感じます。本作に描かれる物語は固くなくて、展開が楽しくて、でも鋭いジェンダー問題のテーマや主張が突きつけられます。

こういう物語がさらにドラマや映画になれば、政治や社会問題をエンタメとして楽しめて教養が身に付きそう。日本の資本ではいろいろ差しさわりがありそうなので、資金力のある外資Netflixなどがドラマに仕立ててくれないかと思うのです。一粒で二度・三度楽しめるのですがね。

まいずれにせよ、ミステリー要素もたっぷりあって楽しい読書の時間でありました。2025年度の山本周五郎賞受賞も納得の、逸品でありました。

あらすじ
野党第一党の高月馨は窮地に追い込まれた。
敵対関係にありつつも、ある法案については共闘関係にあった与党議員・朝沼侑子が自殺したのだ。
「自分の派閥のトップも説得できていなかったの? 法案を通すつもり、本当にあったの?」
死の前日の浅沼への叱責が彼女を追い詰めたのではないかと批判が集まり、謝罪と国対副委員長の辞任を迫られてしまう。
だが、長年ライバル関係を築いてきた高月には朝沼の死がどうも解せない。
朝沼の婚約者で政界のプリンス・三好顕太郎に直談判し、共に死の真相を調べることに。