しあわせの径~本とアートと音楽と

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超絶ドキュメンタリー「ザ・ステアケース 〜階段で何が起きたのか〜」

「ザ・ステアケース 〜階段で何が起きたのか〜」という優れたドキュメンタリーを見ました。(Netflix・2018年公開 / 全13話 / 全635分)

上の写真の穏やかな表情のファミリー(アメリカ・ノースカロライナ州ダーラム)に悲劇が起ったのが2001年12月9日でした。

写真、左から3人目のキャスリーンが階段から落ちて意識がないと911番に通報が入ったのがこの現実ドラマの幕開けでした。通報したのは、キャスリーンの右隣りの夫であるマイケル・ピーターソンでした。キャスリーンは、大量の出血をしていてすでに死亡していて、通報で駆け付けた警察は、直ちに容疑者として第一発見者マイケルを拘束しました。

無実を叫ぶマイケルは小説家で、容疑者となった彼は、弁護団を雇うと同時にフランスの映画制作会社に自分の事件と裁判の記録をカメラに収めることを許可しました。

ファミリーは、写真の一番左のキャスリーンの唯一の実子であるケイトリンを除いて、クレイトン&トッド(マイケルの連れ子で実の息子2人)、養女2人マーガレット&マーサ(写真の右側の二人、ドイツで両親を亡くしたこの姉妹をマイケルが養子にした)は、父親の無実を信じる側に立っています。

組織された弁護団は、調査活動を開始しますが、その費用は当初の思惑を超えて80万ドルにも達しました。

裁判が進められる法廷のようすは、法廷内のすべての人の一挙手一投足が動画に収められていて、裁判長や検察官はもちろんのこと12人の陪審員や証人まですべてモザイクなしで見ることができます。とある証人などは、「あなた顔が映っているけどいいの?」とその後が心配になりますが、いまとなれば20年も前のことだから本人の許可があったのかもしれません。

また、裁判や調査にかかる対策会議にも撮影カメラは入って、マイケルと彼の家族と弁護団のレクチャーや戦略を合議する一部始終を撮影しています。カメラのおかげで視聴者は、バーチャルで会議出席できるのです。

当時58歳のマイケルは、釈放金(数千万円)を払ったことで、事件から裁判が始まって終わるまでの2年以上の期間を自宅で過ごせましたし、1億円の費用を出したことでモチベーションのある弁護団を雇ったので、まさに絵になる裁判記録が動画として残ったことになりました。

この「階段での妻の死をめぐるケース」は、ネタバレになるのでこれ以上詳しくは書きませんが、すぐれた作家が創作したとしても思いもよらない展開を見せます。その一部始終を、本作の撮影クルーは余すなく記録して、編集して、素晴らしいドキュメンタリーに仕上げました。

私はこれと並行して、マイクル・コナリー原作のある弁護士ドラマを同じくNetflixで見ていたのですが、「ザ・ステアケース」のカメラが入った現実の法廷の威厳ある迫力に比べるといかにも作りものだという気がしました。

「ザ・ステアケース」はドラマ制作が進んでいると聞きますが、本作のすべての登場人物たちのリアリティは、下に貼り付けた画像でもわかるように、他の追随を許さないものがあります。

本作の最後の方2018年頃のマイケル・ピーターソンは、すでに70代半ばになっていて、子どもたちも30~40歳代になっていて、キャスリーンの死から15年を費やした歳月の重さがこのドキュメンタリーの価値に加えらえていると感じられました。