オーウェル『動物農場』を漫画で読む ジョージ・オーウェル ベルナルディ・オディール (イラスト), 田内志文 (翻訳) いそっぷ社
概要:イギリスの作家、ジョージ・オーウェルが1945年に発表した小説。
人間から搾取されてきた農場の動物たちが一斉蜂起して「動物主義」の旗のもと、誰もが平等な社会を築こうとする。飛び抜けた知識をもつ豚たちが自然と指導者の地位につき、働いただけの成果を与えられる動物たちは幸せな毎日を送っていた。
しかし指導者の豚の間で権力争いが始まり、やがて一頭の豚が権力を一手に掌握する。彼は反逆を企てた者たちを処刑するなど恐怖政治を敷くようになり、あろうことか人間との接近を図るまでになる——。
『1984』で知られるオーウェルの寓意に溢れた小説を遺族が公認する形で初のカラー漫画化。
〈平等な社会〉はなぜ独裁を許したのか、そして圧政を強いる権力に立ち向かうには何が必要なのか。「ソ連批判の書」という側面にとどまらない、さまざまな教訓に満ちた作品になっています。
昨年、何かで書評に取り上げられていて興味を持っていたので、オーウェルの「動物農場」を漫画にした本書を読みました。
原作の方は読んでいなくて、200ページほどの中編小説が絵本のようにコンパクトにまとめられています。1時間もあれば読了できます。
漫画イラストは ベルナルディ・オディールという現代の作家によるものなのでしょうが、時代を損なわないレトロなタッチで描かれています。
どんな社会体制であっても、権力者が堕落していくと(権力者は堕落するものなのかもしれない)国が崩壊し悲劇が起きることを、スターリンの時代のソ連をモデルに批判的にオーウェルは原作を書いているようです。
本書は人と動物たちの敵対や仲間割れを、ブタ、羊、鶏、馬、犬、羊などを擬人化して漫画にしてわかりやすく描かれています。
スターリン、トロツキー、レーニン、モロトフ、秘密警察、ロシアの知識人、赤軍将校、労働英雄、ロシア正教会やその神父、ソビエト共産党コムソモール(青年組織)、ロシア帝国時代の王侯貴族や地主・資本家・白軍、大英帝国、ナチス・ドイツなどのモデルが登場してきて、これらのモデルが揃うと1945年当時のヨーロッパ社会を象徴的にあらわすピースが完成してしまいます。
オーウェルは共産主義を批判しているのではなく、全体主義や独裁主義を批判していて、ナチスはもちろんのこと自国大英帝国でさえ批判の矛先を向けることを厭わない文学者なのでした。
「一九八四年」は原作を読んでいますが、500頁を超す大作とは感じられないほど一気に読むことができる名著ですので、そちらの方もおすすめです。