しあわせの径~本とアートと音楽と

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ハン・ガンのノーベル文学賞受賞 地球上から「硝煙臭」が消えるまで...

2024年のノーベル文学賞は、韓国のハン・ガンが受賞しました。

今年は、常連の村上春樹をはじめ多和田葉子小川洋子ら日本人作家がノーベル文学賞に手が届くか?といった国内メディアの事前予測がありましたが、ハンガンがアジアの女性として初の同賞受賞となりました。おめでとうございます。

スウェーデン・アカデミーは、選考理由について、「作品において、歴史のトラウマや、目には見えない一連の縛りと向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにしている」と説明。「彼女は肉体と精神、生きる者と死者のつながりに対し、独自の意識を持ち、詩的で実験的な文体で、現代の散文における革新者となった」と評しました。

恥ずかしながら、彼女自身や作品に関して何も知らない私でした。選考理由が高尚過ぎて、私が知らないのも無理はないと思いましたが、ハンガンの翻訳作品がもっとも数多く出版されているのが日本だそうで、私もさっそく彼女の本を図書館で予約をしました。

「別れを告げない」(2024)、「あなたのことが知りたくて」(2022)、「すべての、白いものたちの」(2018)、「回復する人間」(2019)、「ギリシャ語の時間」(2017)、「少年が来る」(2016)、「菜食主義者」(2011)など10冊が図書館には所蔵されていましたが、すでに長蛇の待ち行列でありました。

ノーベル賞を受賞したハンガンは当初、記者会見をする考えもあったようですが、ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘で「毎日多くの死があるのに、何が楽しくて記者会見をするのか」と思いから、会見をしないことにしたようです。
スウェーデン・アカデミーは私たちに喜んでもらうためにこの賞をくれたのではなく、もっと冷静でいられるようにと私にこの賞をくれたのです」とも語ったようです。

3年前のものですが、ハンガンが語る韓国大使館チャンネルのYouTube動画を見ましたが、彼女の語り口や外見は、世界中のニューライトに属する女性とは一線を画すとても穏やかで奥ゆかしくてスケール感を感じるものでした。

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ハンガンは、パク・クネ元政権時には、政権に批判的な芸術家として「ブラックリスト」に名前が記載されていたことでも知られている文学者ですが、こういう人がノーベル文学賞にふさわしい作品を残せるんだと、まだ一作も読んだことがないのに、そう強く感じたのでした。

ノーベルがダイナマイトを発明したことが皮肉ではありますが、それはさておき、今年のノーベル平和賞日本被団協だということも合わせて、地球上から「硝煙の臭い」がなくなることを希求する思いを強くする、そんなハン・ガンの文学賞受賞でありました。

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