しあわせの径~本とアートと音楽と

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祝 藤井聡太八冠誕生/第71期王座戦に勝利

藤井聡太七冠(名人・竜王・王位・王将・棋聖棋王叡王)が、昨日行われた第71期王座戦第4局で永瀬王座(31)に勝利し、王座のタイトルを獲得しました。これで前人未到「八冠(将棋界の全タイトルを同時保持)」となりました。おめでとうございます。

昨日の王座戦第4局は、重苦しい難しい展開の将棋になっていて、おかげで、わが家の遅い夕食が終わった後にも、ゆっくりライブ映像で勝敗の行方を楽しめることができました。

藤井が後半形勢を逆転され勝率が30%くらいになった頃、あろうことかその藤井がAIの候補手にない勝負手(奇手)「5五銀」を指したことから「事件」は起こりました。

そのAIの候補手にない勝負手を指したことで、藤井の勝率は1%にまで下がってしまいました。「どうぞ、詰ましてください」と首を差し出した形にしたのですが、デビュー当時から藤井将棋を見続けてきた身としては、そのシーンは何度も体験した既視感(デジャブ)でありました。

盤面をカオス状態にして、泥沼に引きこむ作戦に出たと思いましたので、横にいた妻に「これ、永瀬は危ないかも」とつぶやいたのですが、その直後に妻も飛び跳ねる逆転劇が用意されていました。

藤井は、負けるにしても予定調の進行で詰まされるのでなくて、「相手がミスをすれば私の勝ちです」という捨て身でパズルのような一手を仕掛けます。実際、王座戦の決勝トーナメントで村田顕弘六段選でも銀の駒を使った同じような作戦で、負け将棋をひっくり返しています。

永瀬も藤井もともに持ち時間の5時間を使い果たしていて、互いに1分以内に指さなければならない状況(1分将棋)に追い詰められた場面での藤井の奇手、5五銀。

Abemaの解説をしていた木村一基九段も永瀬の勝ちを宣言していたにもかかわらず、藤井の5五銀の次に指した永瀬の一手が痛恨の一手になってしまい、永瀬の勝率が99%から1%になってしまいました。

数分後、自分が負けだと気付いた永瀬は自分の頭をたたき髪の毛をかきむしり、「大変なことをしてしまった」というパニック状態に陥ったようでした。

それでも、それから数分後に永瀬王座は脇にたたんで置いていた羽織に袖を通して、礼儀正しく投了を宣言しました。

王座戦5番勝負は、藤井の3勝1敗で終わり勝敗ははっきりしましたが、将棋の内容は、永瀬が土俵際まで追い詰めた将棋が多かった気がします。昨日の第4局の将棋も、前半、藤井の消費時間が2時間50分だった時点で、永瀬はまだ15分くらいでしたから、この一番に表象されるような、永瀬の事前の研究成果が随所に現れた番勝負だったように感じました。

藤井の師匠である杉本昌隆八段が昨夜のTVのインタビューで言っていた藤井聡太の八冠を崩す棋士の一番手は永瀬さん」だという意見に、私も一票入れることにしました。

昨日は、対局後に都ホテル大盤解説会場で、藤井と永瀬が顔を出してそれぞれあいさつを述べる機会がありましたが、敗れた永瀬に贈られた会場からの拍手は、「永瀬さんお疲れさま、いい将棋をありがとう」といった意味合いの長く続く心温まる拍手でありました。

最善の将棋を指して最強の棋士を破ってこその藤井「八冠」の誕生だったと思います。おめでとう!

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