1933年の作品で、東京国立近代美術館に所蔵されているものは、26.3㎝×30.0㎝の大きさのようです。
モノクロームの小品ですが、ダイナミックな線と構図で、昭和初年の鉄に覆われ始めた東京を、鉄の橋によって象徴的に表現しています。
藤牧は近代化されていく東京を、多くの作品として残しているそうで、彩色された作品も残されていて、それらも実に洒脱な趣があります。
藤牧の作家生活は順風満帆だったようですが、一方で国粋主義者たちと行動を共にしていたという話もあったようで、1935年24歳のある日忽然と姿を消してしまい、その後行方不明のまま今日に至っています。
戦死した有能な作家たちは少なくありませんが、藤牧は自分が描いた橋から川に身を投げたのでしょうか。
突然の失踪の真相は分かりませんが、90年前に彼が遺した作品群は、大胆でモダンでカッコよくて、いまも輝きを失っていません。
藤牧義夫は、群馬は舘林が生んだ天才画家であります。
私はこの作家を昨日はじめて知ったのですが、それにしても日本の文化・芸術は懐が深くて不思議で、とても素晴らしいものであります。